「RPAって、結局なんですか」
耳にしたことはあっても、実際に何をしてくれるのか、いまひとつつかめない。そんな方も多いのではないでしょうか。
一方で、「RPAはもう古い」「AIがあればRPAはいらない」という声も聞きます。
結論から言うと、どちらも少し早すぎます。自動化の方法は増えましたが、それはRPAが不要になったのではなく、選択肢が増えたということです。
RPAとは、人の操作を覚えて代わりにやる仕組み
RPAとは、Robotic Process Automationの略ですが、略語を覚える必要はありません。
イメージしやすいのはこんな仕事です。
毎朝、販売管理システムを開く。売上データをCSVでダウンロードする。Excelを開く。数字を貼り付けて集計する。
こういう決まった操作を、毎日人がくり返しているとします。
RPAは、この「パソコン上でのクリックや入力の手順」を一度覚えさせておくと、次からは人の代わりに実行してくれる仕組みです。
工場のロボットのように部品を組み立てるわけではありません。パソコンの中で人の操作を代行するロボットだと考えると分かりやすいはずです。
RPAの何が便利だったのか
RPAが多くの会社で使われてきた理由は、はっきりしています。
既存のシステムを改修しなくても、自動化できるからです。
古い業務システムの中には、次のような事情を抱えているものが少なくありません。
- システム同士が直接データをやり取りする仕組み(いわゆるAPI)を持っていない
- ベンダーに改修を頼めない、または費用が見合わない
- 画面を人が操作する以外に、データを取り出す方法がない
こうした場合でも、人がマウスとキーボードで操作できるなら、RPAにも同じ操作をさせられます。
システムの中身に手を入れる必要がないため、比較的短期間で導入できる点も、RPAが広まった理由のひとつです。ここは、今でも変わらないRPAの強みです。

決まった手順の繰り返しなら、人の操作をそのままRPAが引き継げる
「転記を自動化する」より「転記をなくす」
ただし、この十年ほどで状況は変わってきました。
昔は、「システムAから人が数字をコピーして、Excelを経由し、システムBへ入力する」という流れをそのままRPAに置き換える発想が主流でした。
今は、システムAとシステムBを直接つなげたり、同じデータベースを両方から参照したり、最初から必要な帳票を自動で作れたりするケースが増えています。
つまり、「人がやっていた転記作業を速くする」のではなく、転記そのものをなくせる場合が出てきたということです。
AIによるブラウザ操作という新しい選択肢
最近は、AIが画面を見ながら操作するという方法も出てきました。
ボタンの場所を探す、書かれている内容を読む、状況に応じて操作を変える。こうしたことを、AIがある程度こなせるようになりつつあります。
とはいえ「AIがあるからRPAはいらない」というのは、少し単純すぎる話です。両者には向き不向きがあります。
たとえば、毎日同じ時間に同じサイトを開き、同じ場所を押して、同じ形式のCSVをダウンロードする。手順が完全に決まっているなら、RPAが向いています。
一方で、取引先ごとにサイトも画面構成もばらばらで、請求書が置かれている場所も毎回微妙に違う。内容を見て「これが請求書だ」と判断してから取得する必要がある。こういう仕事では、状況を見て判断できるAIのほうが向いている可能性があります。
API・RPA・AI、どう選べばいいのか
道具の比較表を丸暗記する必要はありません。大事なのは、仕事の性質から考えることです。
- システム同士を直接つなげられる → API連携やシステム連携を検討する
- 画面操作が必要で、毎回ほぼ同じ手順 → RPAが有力
- 画面操作が必要だが、そのつど内容を見て判断が要る → AIによるブラウザ操作が向く可能性
- 同じデータを何度も転記している → そもそものデータの持ち方を見直せないか考える
「RPAを入れるかどうか」ではなく、「この仕事にはどの方法が合うか」を先に考える。この順番を守るだけで、選ぶ道具は自然と変わってきます。

システムをつなぐのか、決まった操作を繰り返すのか、状況を見て判断するのか
自動化する前に、なくせないか考える
自動化したい仕事を見つけたとき、多くの人はまず「これを何で自動化しよう」と考えます。
その前に、一度立ち止まって聞いてみてください。
そもそも、なぜこの作業をしているのだろう。
たとえば、毎月100件のデータを別のシステムへ手入力しているとします。
RPAを使えば、この100件を自動で入力できます。作業は速くなります。
しかし、元のデータを新しいシステムから直接参照できるようにできれば、そもそも100件を入力する作業自体がなくなるかもしれません。
「作業を速くする」ではなく「作業をなくす」。この視点を一度持てるかどうかで、改善の効果はまったく変わってきます。
RPAはなくなるのか
「RPAに将来性はあるのか」という聞かれ方をよくしますが、実はこの問い自体が、少しずれています。
自動化の選択肢が増えたことで、以前は何でもRPAに任せていた仕事の一部を、API連携やAIなど別の方法でも解決できるようになりました。
一方で、古い業務システム、外部と連携できないサービス、決まりきった画面操作、すぐには入れ替えられない環境などでは、今もRPAが合理的な選択肢です。
つまり、「RPAが残るか消えるか」ではなく、「どんな仕事にRPAを使うか」を考えるほうが、実際の判断には役立ちます。
自動化の選択肢が増えたからこそ、先に道具を決めず、仕事の性質を見てから方法を選ぶ。そして時には、自動化するより作業自体をなくせないか考えてみる。それが、これからの業務改善に欠かせない視点です。
