営業部では顧客管理システム、現場ではExcel、経理では会計サービスを利用している。
それぞれの部署では便利になったはずなのに、部署をまたぐたびに転記や確認が発生し、会社全体では仕事が減っていない。
このような状態は、DX、つまりデジタルを使った仕事の改善で起こりやすい「一部だけ便利になる」問題です。
サイロ化とは何か
サイロ化とは、部署やシステムごとに情報が閉じてしまい、会社全体で共有・活用できない状態です。
例えば、一つの注文について次のように情報が分かれているとします。
| 担当 | 管理している情報 |
|---|---|
| 営業 | 顧客名、商品、受注内容 |
| 現場 | 作業指示、数量、進捗 |
| 経理 | 売上、請求、入金 |
| 経営者 | 月末に集めた集計表 |
それぞれの部署では必要な情報を管理できています。
しかし、同じ顧客名や案件番号が統一されていなければ、情報をつなぐには人による確認が必要です。内容を変更したときも、複数のファイルやシステムを修正しなければなりません。
部署ごとの情報が、穀物を保存する「サイロ」のように分かれていることから、サイロ化と呼ばれます。
部分最適とは何か
部分最適とは、特定の部署や作業だけを見れば効率化できていても、会社全体では最も良い状態になっていないことです。
例えば、営業部が入力しやすい顧客管理システムを導入したとします。
営業部の作業時間は減っても、その情報を現場や経理で使えなければ、別の担当者がExcelへ転記することになります。
この場合、営業部では改善できていますが、会社全体では新しい作業が増えている可能性があります。
一つの業務から始めることは悪くない
部分最適という言葉から、「一つの業務だけを改善してはいけない」と思うかもしれません。
しかし、中小企業が最初から会社全体を作り直すのは現実的ではありません。
問題は、小さく始めることではなく、その改善が前後の業務から切り離されたままになることです。
例えば受注業務から始める場合でも、将来は次の流れにつながることを考えておきます。
受注 → 作業指示 → 実績報告 → 請求 → 入金 → 原価・利益の確認
最初に整えるのは受注だけでも構いません。
ただし、次の業務でも利用できるように、顧客・案件・商品などの情報を整理しておくことが重要です。
全体最適は「一つのシステムにまとめること」ではない
全体最適というと、すべての業務を一つの大きなシステムへ集約することだと思われがちです。
しかし、会計には会計サービス、契約には電子契約サービスなど、それぞれの業務に適した仕組みがあります。
大切なのは、システムの数ではありません。
- 誰がどの業務に責任を持つか
- 正しい情報をどこに保存するか
- 前後の業務へ何の情報を渡すか
- 同じ顧客や案件をどのように識別するか
これらが決まっていれば、複数のシステムを利用していても、会社全体の流れをつくれます。
反対に、一つのシステムを導入しても、業務の役割や情報の扱いが決まっていなければ、別のExcelや紙が増えてしまいます。

部分最適・サイロ化では部署ごとに便利でも全体ではつながらない。全体最適は前後の業務まで見て、会社全体の流れを整える
全社的な改善とDXの成果には関連がある
IPAが公表した「DX動向2026」では、DXの成果が出ている企業ほど、全社的な業務プロセスの最適化に取り組んでいる傾向が示されました。
また、成果が出ている企業では、経営者・IT部門・業務部門の連携ができている割合も高くなっています。
この結果からも、DXの成果は一つの製品や技術だけで決まるのではなく、部署を越えて業務を考えられるかどうかが重要だと分かります。
中小企業が全体最適へ進む方法
最初から全社共通の大規模な計画を作る必要はありません。
まずは、負担が大きい一つの業務について、次の四つを確認します。
- この業務の前に、どこから情報が来るか
- この業務の後に、誰が情報を使うか
- どの情報を正しいものとして管理するか
- 改善の成果を何で確認するか
目の前の作業だけでなく、その前後まで見ることが、部分最適を全体最適へつなげる第一歩です。
まとめ
サイロ化とは、部署やシステムごとに情報が分かれ、会社全体で利用できなくなることです。
部分最適とは、一部の作業は便利になっても、会社全体では転記や確認が残っている状態です。
一つの業務から改善を始めること自体は問題ではありません。
その業務を前後の流れから切り離さず、役割・情報・成果の測り方を整理しながら、周辺業務へつなげていくことが重要です。
Arvixは、一つの業務を入り口として、前後の業務やデータの流れを整理し、会社全体につながる仕組みづくりを支援しています。サービス内容もご覧ください。
参考:経済産業省「DXレポート」、IPA「DX動向2025」「DX動向2026」
